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8 電波の人体影響に関する公的機関の見解

世界保健機関(WHO)の見解

WHOは、ファクトシートで電磁界と健康に関する公式見解を提供しています。また、このファクトシートは状況に応じて見直しがされています。

携帯基地局から発射される電波について
(WHOファクトシート304「基地局及び無線技術」2006年5月)

基地局から発射される電波については、「これまでに蓄積された全ての証拠から、基地局からの無線周波(RF)の信号(電波)によって、健康に有害な短期的または長期的影響が起きることは証明されていません。」と述べるとともに、「基地局および無線ネットワークからの弱いRF信号が健康への有害な影響を起こすという説得力のある科学的証拠はありません。」との公式見解を発表しています。

携帯電話機から発射される電波について
(WHOファクトシート193「携帯電話」2011年6月改訂版)

携帯電話機から発射される電波について「携帯電話が潜在的な健康リスクをもたらすかどうかを評価するために、これまで20年以上にわたって多数の研究が行われてきました。今日まで、携帯電話使用を原因とするいかなる健康影響も確立されていません。」との公式見解を述べています。

電磁過敏症について
(WHOファクトシート296「電磁過敏症」 2005年11月)

電磁波をあびることによって頭痛やめまい等の症状が現れるとされる、いわゆる電磁過敏症(EHS)について、WHOは、「EHSには明確な診断基準がなく、EHSの症状を電磁界ばく露と結び付ける科学的根拠はありません。」と公式な見解を述べるとともに、「政府は、電磁界の健康影響の可能性に関する情報を、EHSの人々、医療専門家、雇用主に向けて、バランスよく、適切に提供すべきです。このような情報の中には、EHSと電磁界ばく露との結びつきに関する科学的根拠は現在、存在しないという明確な声明を含めるべきです。」と助言しています。


今後、WHOは、高周波電磁界(100kHz〜300GHz)の発がん以外の健康影響も含めた総合的な健康リスクの評価を行い、2012年に、環境保健クライテリアを発刊する予定です。

国際がん研究機関(IARC)の発がん性評価

IARCの発がん性評価方法

IARCは1965年に発足したWHOのがん研究専門組織で、化学物質や放射線、ウィルスなどのヒトへの発がん性評価を行っています。

このIARCの発がん性評価は、発がん性の強さではなく、発がん性の証拠の強さを評価し、下の5つのグループに分類するものです。


分類 これまでに分類された因子の例
グループ1:
ヒトに対して発がん性がある
コールタール、カドミウム、ダイオキシン(2,3,7,8-TCDD)、ホルムアルデヒド、タバコ、アルコール飲料、エックス線・ガンマ線、太陽放射、太陽灯、紫外線、アスベスト [合計107種]
グループ2A:
ヒトに対して恐らく発がん性がある
PCB、ディーゼルエンジン排ガス [合計59種]
グループ2B:
ヒトに対して発がん性があるかも知れない
クロロホルム、鉛、コーヒー、漬物、ガソリンエンジン排ガス、超低周波磁界、無線周波電磁界[合計267 種]
グループ3:
ヒトに対する発がん性を分類できない
カフェイン、原油、水銀、サッカリン、お茶、コレステロール、蛍光灯、静磁界、静電界、超低周波電界 [合計508種]
グループ4:
ヒトに対して恐らく発がん性はない
カプロラクタム(ナイロンの原料) [1種]

ヒトにおける証拠(疫学研究)と実験動物における証拠の強さに基づき下のように分類されています。

例えば、ヒトにおける証拠が「限定的」で実験動物における証拠が「十分」に満たない場合、又は、ヒトにおける証拠が「不適当」で実験動物における証拠が「十分」の場合、グループ2Bに分類されます。


  実験動物における証拠
十分 限定的 不適当 発がん性なしを
示唆
ヒトにおける
証拠
十分 グループ1
限定的 グループ2A グループ2B(例外的に2A)
不適当 グループ2B グループ3
発がん性なしを
示唆
グループ3 グループ4

IARCの無線周波電磁界(電波)の発がん性評価結果

2011年5月、IARCは、日本を含む世界14カ国から参加した専門家による検討会を開催し、携帯電話などの無線通信やTV・ラジオ放送などに用いられる電波を含む、無線周波(30kHz〜300GHz)電磁界のヒトに対する発がん性評価を実施し、「ヒトに対して発がん性があるかも知れない」(グループ2B)と分類したと発表しました。

IARCは発がん性評価にあたり、ヒトにおける証拠について、次の3つに分類し、入手可能な研究文献について検討しました。

・レーダーおよびマイクロ波への職業的ばく露
・TV・ラジオおよび基地局など無線通信用の電波の環境ばく露
・携帯電話の使用に関連した個人のばく露

その結果、放送局や携帯電話基地局からの電波の環境ばく露が、がんを発症する証拠は「不適当」と評価しました。携帯電話使用に関連した個人ばく露については、検討された文献の1つに、10年以上の携帯電話の使用にともなう神経膠腫などのリスク上昇は全体的には見られないが、一部、携帯電話の累積使用時間が上位10%の人たちだけにおいて、神経膠腫のリスク上昇が示唆されると報告したものがありました。(但し、文献の著者らも、バイアス及び誤差の可能性を認めており、「全体としてリスク上昇は観察されなかった」と結論付けています)また、聴神経腫についてもリスク上昇を示した研究文献を考慮し、神経膠腫や聴神経腫を発症する証拠は「限定的」、その他のがんを発症する証拠は「不適当」と評価し、総合的に「ヒトにおける限定的な証拠がある」と結論づけました。

実験動物における証拠については、一部がん発症率の増加を示す文献があったことから、がんを発症する証拠は「限定的」と評価しました。
これら検討結果からIARCは、無線周波電磁界が「ヒトに対して発がん性があるかも知れない」(グループ2B)と分類したものです。


「携帯電話と発がんについての国立がん研究センターの見解(2011.6.28)」によれば、原発性脳腫瘍の発生頻度は欧米や日本のデータから人口10万人当り14〜20人と報告され、そのうち約20〜30%が神経膠腫であるとしています。よって、神経膠腫の発症率は10万人中6人と考えられます。リスク上昇の報告によると、上昇は40%とされており、神経膠腫の発症率を10万人中約6人とすれば、発症率は10万人で8.4人という試算になります。

IARCの発がん性評価に対するWHOの見解

WHOはIARCの発がん性評価を受け、2011年6月にWHOファクトシート193「携帯電話」を改訂し、携帯電話から発射される電波を原因とするいかなる健康影響も確立していないという、これまでと同様の見解を改めて示しました。

また、IARCの発がん性評価について「10年以上の携帯電話使用に伴う神経膠腫および髄膜腫のリスク上昇は見られませんでした。使用期間の増大に伴うリスク上昇の一貫した傾向はありませんでしたが、自己申告された携帯電話の累積使用時間が上位10%に入った人々において。神経膠腫のリスク上昇を示唆するものがありました。研究者らは、バイアスと誤差があるために、これらの結論の強固さは限定的であり、因果的な解釈はできないと結論しています。主としてこれらのデータに基づき、IARCは、グループ2Bに分類しました。このカテゴリーは、因果関係は信頼できると考えられるが、偶然、バイアスまたは交絡因子を根拠ある確信をもって排除できない場合に用いられます。」と説明しました。

さらに、脳腫瘍のリスク上昇は確立されなかったものの、長期間の携帯電話使用についての研究データがないためにさらなる研究が必要であり、現在も若年者に関する研究が行われていると述べています。


原因と考えている要因とは異なる、結果に影響を与える可能性のある要因

国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の見解

ICNIRPは、1998年に電磁界の健康影響に関する世界中の研究結果を精査の上、「時間変化する電界、磁界及び電磁界による曝露を制限するためのガイドライン(300GHzまで)」を定めました。ICNIRPはその後も関連の研究結果を定期的に精査しており、上記ガイドラインの妥当性の検証を行っていましたが、2009年および2010年に上記ガイドラインが妥当であるとする見解を改めて示しています。また、この国際ガイドラインは、WHOファクトシートNo. 304「基地局および無線技術」(2006年5月)、およびIARCによる無線周波電磁界の発がん性評価ののちに発行されたWHOファクトシートNo. 193「携帯電話」(2011年6月)において、ばく露制限のガイドラインとし て引用されています。


総務省の見解

総務省は、「生体電磁環境研究推進委員会」を設置し、1997年から10年間にわたり、動物実験、疫学調査等による生体の安全性評価等に関する研究を推進し2007年4月にWHOでのこれまでの研究成果も含め生体への安全性評価等に関する研究の最終報告を発表しています。報告要旨については、次のとおりです。


1.社会的に関心のある事項への考え方
  社会的に関心のある事項への考え方を以下のとおり整理致しました。

(1)子供への影響

1)現状の電波防護指針は子供も含むあらゆる人々を対象としており、指針値は妥当である。直ちに改訂する必要はない。

2)WHOの提言に基づき、子供に関する各種研究の実施を今後も継続して検討していくことが必要である。

(2)電波の長期間ばく露の影響について

1)長期間の電波ばく露により脳腫瘍の発生に及ぼす影響は認められないことを確認した。

2)国際協調を図るため、携帯電話端末の長期間使用に関する疫学研究の実施に向 けた検討を図る。

(3)電磁過敏症について

1)WHOの見解では、電磁過敏症の症状が電磁界ばく露と関連するような科学的根拠はない。

2)間違った情報の氾濫を防ぐため、科学的根拠に基づいた正しい情報の周知広報の強化が必要である。

(4)予防原則に対する考え方

WHOの見解と同様に、現状の電波防護指針は予防的措置として十分妥当である。

(5)電波防護指針について

1)現状の電波防護指針は適当であり、直ちに改訂の必要はない。

2)今後、科学技術の進展により電波の利用形態が変化することを考慮し、国際動向や各種研究結果を踏まえながら必要に応じ、国際ガイドラインの改訂、電波防護指針の見直しの必要性について検討することが重要である。

(6)リスクコミュニケーションについて

1)総務省主催で、行政及び専門家から国民や事業者に向けた講演会を実施してきたところである。

2)引き続き講演会等により、国民に対し電波の正しい知識の普及に努めることが重要である。


2.電波の安全性に関する見解
  電波の安全性に関する見解は以下のとおりです。

(1)電波の人体への影響については、我が国をはじめ、世界各国で50年以上に及ぶ研究成果が蓄積されてきており、これらの膨大な科学的知見に基づいて、電波の健康影響の閾値に十分な安全率を見込んだ電波防護指針が策定されている。

(2)近年、携帯電話の急激な普及を背景として、電波による健康影響に関して国民の関心が高まっているが、我が国をはじめ国際的な専門機関では、電波防護指針値を下回る強さの電波によって健康に悪影響を及ぼすという確固たる証拠は認められないとの認識で一致している。

(3)一方、電波防護指針値以下の低レベルの電波が人体に影響を与える可能性があるとの報告が一部にはあるが、これらの研究は必ずしも実験条件等が適切ではないといった問題が指摘されており、このような研究成果は、本来、再現性の確認等を経てから安全性評価のデータとして取り扱われるべきものである。しかしながら、正確な情報提供が必ずしも十分でないことが、国民の漠然とした不安を招く要因となっている。

(4)本委員会は、世界保健機関(WHO)における国際電磁界プロジェクトと協調しながら、医学・生物学の専門家と高精度なばく露評価を行う工学の専門家による密接な連携の下で、公正かつ中立的に研究を行っている。本委員会におけるこれまでの10年間の研究の成果では、いずれも携帯電話基地局及び携帯電話からの電波が人体に影響を及ぼさないことを示している他、過去に影響があると報告された結果について生物・医学/工学的な手法を改善した実験においては、いずれも影響がないという結果を得ている

総務省(5)したがって、本委員会は、現時点では電波防護指針値を超えない強さの電波により、非熱効果を含めて健康に悪影響を及ぼすという確固たる証拠は認められないと考える。


総務省は、国民が安心して安全に電波を利用できる社会を構築するため、電波による人体への影響に関する研究を促進するとともに、電波防護指針の評価・検討を行うことを目的として、2008年6月より「生体電磁環境に関する検討会」を開催しています。

http://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/ele/com/system/index.htm





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