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国際がん研究機関(IARC)の発がん性評価

IARCの発がん性評価方法

IARCは1965年に発足したWHOのがん研究専門組織で、化学物質や放射線、ウィルスなどのヒトへの発がん性評価を行っています。

このIARCの発がん性評価は、発がん性の強さではなく、発がん性の証拠の強さを評価し、下の5つのグループに分類するものです。

分類 これまでに分類された因子の例(2016年10月24日現在)
グループ1:
ヒトに対して発がん性がある
コールタール、カドミウム、ダイオキシン(2,3,7,8-TCDD)、ホルムアルデヒド、タバコ、加工肉(ハム、ベーコン、ソーセージなど)、アルコール飲料、エックス線・ガンマ線、太陽放射、太陽灯、紫外線、アスベスト
[合計119種]
グループ2A:
ヒトに対して恐らく発がん性がある
非ヒ素系殺虫剤、クレオソート油、無機鉛化合物、赤肉(牛・豚・羊などの肉)
[合計81種]
グループ2B:
ヒトに対して発がん性があるかも知れない
クロロホルム、鉛、漬物、ガソリンエンジン排ガス、超低周波磁界、無線周波電磁界
[合計292種]
グループ3:
ヒトに対する発がん性を分類できない
カフェイン、原油、水銀、サッカリン、お茶、コーヒー、コレステロール、蛍光灯、静磁界、静電界、超低周波電界
[合計505種]
グループ4:
ヒトに対して恐らく発がん性はない
カプロラクタム(ナイロンの原料)
[1種]

各グループは、ヒトにおける証拠(疫学研究)と実験動物における証拠の強さに基づき、下記のように分類されています。

例えば、ヒトにおける証拠が「限定的」で実験動物における証拠が「十分」に満たない場合、又は、ヒトにおける証拠が「不適当」で実験動物における証拠が「十分」の場合、グループ2Bに分類されます。

  実験動物における証拠
十分 限定的 不適当 発がん性なしを
示唆
ヒトにおける
証拠
十分 グループ1
限定的 グループ2A グループ2B(例外的に2A)
不適当 グループ2B グループ3
発がん性なしを
示唆
グループ3 グループ4

IARCの無線周波電磁界(電波)の発がん性評価結果

2011年5月、IARCは、日本を含む世界14カ国から参加した専門家による検討会を開催し、携帯電話などの無線通信やTV・ラジオ放送などに用いられる電波を含む、無線周波(30kHz~300GHz)電磁界のヒトに対する発がん性評価を実施し、「ヒトに対して発がん性があるかも知れない」(グループ2B)と分類したと発表しました。

IARCは発がん性評価にあたり、ヒトにおける証拠について、次の3つに分類し、入手可能な研究文献について検討しました。

・レーダーおよびマイクロ波への職業的ばく露

・TV・ラジオおよび基地局など無線通信用の電波の環境ばく露

・携帯電話の使用に関連した個人のばく露

その結果、放送局や携帯電話基地局からの電波の環境ばく露が、がんを発症する証拠は「不適当」と評価しました。携帯電話使用に関連した個人ばく露については、検討された文献の1つに、10年以上の携帯電話の使用にともなう神経膠腫などのリスク上昇は全体的には見られないが、一部、携帯電話の累積使用時間が上位10%の人たちだけにおいて、神経膠腫のリスク上昇が示唆されると報告したものがありました。(但し、文献の著者らも、バイアス及び誤差の可能性を認めており、「全体としてリスク上昇は観察されなかった」と結論付けています)また、聴神経腫についてもリスク上昇を示した研究文献を考慮し、神経膠腫や聴神経腫を発症する証拠は「限定的」、その他のがんを発症する証拠は「不適当」と評価し、総合的に「ヒトにおける限定的な証拠がある」と結論づけました。

実験動物における証拠については、一部がん発症率の増加を示す文献があったことから、がんを発症する証拠は「限定的」と評価しました。

これら検討結果からIARCは、無線周波電磁界が「ヒトに対して発がん性があるかも知れない」(グループ2B)と分類したものです。


※「携帯電話と発がんについての国立がん研究センターの見解(2011.6.28)」によれば、原発性脳腫瘍の発生頻度は欧米や日本のデータから人口10万人当り14~20人と報告され、そのうち約20~30%が神経膠腫であるとしています。よって、神経膠腫の発症率は10万人中6人と考えられます。リスク上昇の報告によると、上昇は40%とされており、神経膠腫の発症率を10万人中約6人とすれば、発症率は10万人で8.4人という試算になります。

IARCの発がん性評価に対するWHOの見解

WHOはIARCの発がん性評価を受け、2011年6月にWHOファクトシート193「携帯電話」を改訂し、「携帯電話から発射される電波を原因とするいかなる健康影響も確立していない」という、これまでと同様の見解を改めて示しました。

また、IARCの発がん性評価について「10年以上の携帯電話使用に伴う神経膠腫および髄膜腫のリスク上昇は見られませんでした。使用期間の増大に伴うリスク上昇の一貫した傾向はありませんでしたが、自己申告された携帯電話の累積使用時間が上位10%に入った人々において。神経膠腫のリスク上昇を示唆するものがありました。研究者らは、バイアスと誤差があるために、これらの結論の強固さは限定的であり、因果的な解釈はできないと結論しています。主としてこれらのデータに基づき、IARCは、グループ2Bに分類しました。このカテゴリーは、因果関係は信頼できると考えられるが、偶然、バイアスまたは交絡因子を根拠ある確信をもって排除できない場合に用いられます。」と説明しました。

さらに、脳腫瘍のリスク上昇は確立されなかったものの、長期間の携帯電話使用についての研究データがないためにさらなる研究が必要であり、現在も若年者に関する研究が行われていると述べています。


※原因と考えている要因とは異なる、結果に影響を与える可能性のある要因