電波が人体に与える影響

電波が人体に与える影響について、日本を含めた世界各国でこれまでに50年以上に及ぶ研究成果が蓄積されています。これらの膨大な科学的知見から、電波が人体に与える影響について多くのことが分かってきています。

現在、はっきりと人体に影響があると確認されている、「刺激作用」と「熱作用」について説明します。

ピリピリ・チクチク感じる「刺激作用」

電波があたっている金属にさわると、人体に電流が流れます。また、電波の影響によって体内で誘導電流を生じる場合もあります。これらの電流がある程度の強さ以上の場合、「ビリビリ」「チクチク」と感じます。これが電波による「刺激作用」です。

この感覚は電波の周波数と関係していて、数十Hzのような非常に低い周波数で感じやすいのですが、周波数が高くなるにつれて次第に感じなくなり、数百kHz程度になるとほとんど感じなくなります。つまり、電波の周波数が高くなるほど影響が薄れてくるということです。

電流が流れて弱い刺激を感じること自体は危険ではありませんが、後に述べる電波防護指針を決める根拠の一つとなっています。

体温を上昇させる「熱作用」

電波が人体にあたると、その一部は反射されますが、一部は人体に吸収されます。吸収された電波のエネルギーは熱となり、全身又は局所的に人体の体温を上昇させます。この体温上昇によって起きる生体作用を「熱作用」といいます。

強い電波が体に当たると、体温が上昇して温かく感じます。この熱作用も周波数によっていくらか変わりますが、数百kHzより高い周波数では、刺激作用が非常に弱くなるために熱作用が主になります。

吸収される電波のエネルギーが極めて強く、約1℃以上深部体温が長い時間上昇する場合には、生体に悪影響を与えるということが多くの動物実験から知られています。

ただし、約1℃以上の深部体温上昇を引き起こすには、安静状態で全身に1kgあたり約4Wもの電波のエネルギー(全身平均SARで4W/kg)を吸収する必要があります。しかし一般人の日常生活では、このような大きな電波エネルギーを吸収することはないので、熱作用による人体への影響はほとんど気にする必要はありません。

スマートフォン・携帯電話や放送で使われている電波の周波数においても熱作用が主ですが、その作用が充分小さく、人体に影響が無いような強度になるように電波防護指針で定められています。

→【電波防護指針とは】のリンク


※SAR(Specific Absorption Rate: 比吸収率):生体が電磁界にさらされることによって単位質量の組織に吸収される電力のこと(単位時間当たりのエネルギーに相当し,人体では6分間の平均値)。SARを全身にわたり平均したものを「全身平均SAR」、人体局所の任意組織10gにわたり平均したものを「局所SAR」といいます。


非熱作用とは

電波が生体の健康に及ぼす作用としては、刺激作用および熱作用があります。一方、それら以外の何らかの作用が微弱な電波利用でも存在するのではないかとの懸念があり、一般に非熱作用と呼ばれています。

非熱作用については、遺伝子の僅かな損傷、脳や神経系への影響といった事例が報告されていますが、それらの再現実験や同様の研究が世界中で実施された結果、報告と同じような実験結果および結論の再現に至った例はありません。