【2002-3】近傍電磁界ばく露による幼少ラットの脳機能に及ぼす影響

研究目的

脳機能発育の段階にある幼少ラット頭部を対象として、1.5GHz帯携帯電話の電波ばく露によって、脳の発育や分化あるいは機能に重要な意味を持つ血液脳関門(BBB:Blood-Brain Barrier)への影響を検討しました。

研究手法

研究はラットを用いた動物実験により行いました。実験で用いたラットは4週齢の幼少ラットおよび10週齢の若齢ラットを用い、SARが2W/kgおよび6W/kgのばく露群、および電波ばく露をしない偽ばく露群のラットを比較しました。ばく露群のラットには1.5 GHz帯のPDC方式の電波を1日90分、1週当り6日あるいは7日とし最大2週間、電波をばく露しました。

そして、ばく露中のラットの体重測定、状態観察および、ばく露後のラットの脳組織を解析しました。

研究結果

偽ばく露群、ばく露群とも血液脳関門の関連遺伝子の発現に有意な変化は認められず、また血液透過性においても電波ばく露の影響は見られませんでした。

以上のことから、携帯電話に対する電波防護指針の指標である2 W/kgおよびそれを上回る6 W/kgの短期ばく露において、幼少および若齢ラットで血液脳関門に障害を及ぼすような影響は発生していないことがわかりました。

本研究から派生した論文

Kuribayashi M, Wang J, Fujiwara O, Doi Y, Nabae K, Tamano S, Ogiso T, Asamoto M, Shirai T. Lack of effects of 1439 MHz electromagnetic near field exposure on the blood-brain barrier in immature and young rats. Bioelectromagnetics. 2005 Oct;26(7):578-88. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16142770