調査研究レポート

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【1999-1-3】携帯電話電波(1.5 GHz)がラットの肝臓がんに及ぼす促進作用に関する研究

目的

以前の研究で、929.2MHzの携帯電話電波への局所ばく露にはラットの肝臓がんの促進が観察されなかったことから、本研究では、1.439GHzの携帯電話電波について同様の実験を実施し、929.2MHzの電波に関する結果と比較することを目的としました。

方法

我が国の標準規格であるPDC方式の携帯電話に用いられている、1.439GHzのTDMA信号(50パルス/秒、デューティ比33%)を、1/4波長のモノポールアンテナからラットに照射しました。ドシメトリ計算の結果、アンテナ放射電力の時間平均が0.33Wの時、ピークSARは肝臓では0.937~1.91W/kg、他の組織では6.20~7.60W/kg、全身平均SARは0.453~0.680W/kgでした。電波ばく露は90分間/日、5日/週、6週間にわたり実施しました。雄のF344系統の雄のラット(6週齢)に対し、肝臓がんを誘発するために発がん物質のジエチルニトロソアミン(DEN)を体重1kgあたり200mg投与しました。2週後、ラットを1匹ずつプラスチック製のシリンダーに固定した状態で、電波ばく露または偽ばく露を開始しました。3週目に、全てのラットに対して肝臓の2/3切除を実施しました。8週目(6週間のばく露または偽ばく露後)に実験を終了しました。対照群はシリンダーに固定せず、DEN投与及び3週目の肝臓の部分的切除のみを実施しました。各ラットの体重を週1回測定しました。実験終了後に摘出した肝臓の部位ごとに標本を作成し、胎盤型グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST-P)陽性細胞巣(肝臓がんの前がん病変マ ーカー)の個数及び面積を、画像処理装置を用いて測定しました。また、各ラットの主な臓器の重さを測定し、組織病理学的分析を実施しました。ホルモン分析のため、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、コルチコステロン、メラトニンの血清レベルを測定しました。

結果

電波ばく露群及び偽ばく露群における体重増加の遅れが、シリンダーへの固定を開始した2週目以降に観察されたものの、ばく露群と偽ばく露群との間には差はありませんでした。ばく露群におけるコルチコステロン、ACTH、メラトニンの血清レベルはいずれも、偽ばく露群と比較して有意に高いことが観察されました。但し、コルチコステロン及びACTHの値は、対照群と比較して有意に低いものでした。電波ばく露は、GST-P陽性細胞巣の発生を促進することはありませんでした。ばく露群における個数及び面積は、偽ばく露群と比較して少なく、個数については統計的に有意に少ないものでした。但し、偽ばく露群における細胞巣の個数は、対照群と比較して有意に増加していました。組織病理学的解析では、肝細胞の細胞巣の変化及び微小な肉芽腫が観察されました。脾臓及び副腎皮質には、組織病理学的変化は観察されませんでした。

結論

本研究で用いた実験条件では、1.439GHzの電波への局所ばく露には、929.2MHzの場合と同様に、ラットの肝臓がんに及ぼす促進作用はないことが明確に示されました。

出典

Imaida K, Taki M, Watanabe S, Kamimura Y, Ito T, Yamaguchi T, Ito N, Shirai T. The 1.5 GHz electromagnetic near-field used for cellular phones does not promote rat liver carcinogenesis in a medium-term liver bioassay. Jpn J Cancer Res. 1998 Oct;89(10):995-1002.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9849576

WHO研究データベース

http://www.who.int/peh-emf/research/database/emfstudies/viewstudy.cfm?ID=13