【2008-1】携帯電話電波の脳細胞に及ぼす影響についての研究

研究目的

携帯電話の普及に伴い、携帯電話は頭部に保持して使われることから、電波ばく露が脳障害を誘発する可能性が懸念されています。脳障害の指標には、脳内免疫細胞として機能するミクログリア細胞の活性化と、免疫や生体防御において重要な役割を果たしているタンパク質であるサイトカイン産出があります。そこで本研究では、携帯電話の電波ばく露がミクログリア細胞の活性化、及び各種のサイトカイン産出に及ぼす影響を、ラットの細胞を用いた実験で評価しました。

研究方法

培養したラットのミクログリア細胞を、比吸収率(SAR)が2 W/kgまでの1950 MHz W-CDMA電波またはCDMA2000電波に2時間ばく露し、24時間後及び72時間後に、ミクログリア細胞の活性化の指標である主要組織適合遺伝子複合体クラスII(MHC Class II)の発現、ならびに腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン-1b(IL-1b)、インターロイキン-6(IL-6)の各種サイトカインの産出の変化を調べました。

研究結果

いずれの電波ばく露によっても、MHC class II発現、ならびに各種サイトカイン産生への影響は認められませんでした。このことから、2W/kgまでの1950MHz W-CDMA及びCDMA2000電波ばく露が脳障害を誘発する可能性はないと考えられます。

本研究から派生した論文

Hirose H, Sasaki A, Ishii N, Sekijima M, Iyama T, Nojima T, Ugawa Y. 1950 MHz IMT-2000 field does not activate microglial cells in vitro. Bioelectromagnetics. 2010 Feb;31(2):104-12. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19650078