【2002-1】携帯電話の側頭葉抑制性介在ニューロンへの影響

研究目的

これまで「【1999-2】携帯電話電磁場のヒト中枢神経への影響に関する研究」における研究で、携帯電話の電波が脳幹に及ぼす影響を検討し、電波は脳幹における聴覚情報処理に影響を与えないという知見が得られています。今回はそれに続くより高感度の検査法として音2発刺激による中潜時反応(Middle Latency Response; 以下MLR)法により、聴覚路における抑制性介在ニューロンという障害に弱い細胞への影響を検討しました。

研究手法

実験は聴覚に異常のない12名の成人を対象に行いました。

周波数800MHz帯、最大出力0.8Wの電波を被験者に30分間ばく露した後の脳波と、ばく露する前の脳波を比較することにより影響を確認しました。具体的には被験者に時間間隔の異なる2発のクリック音を聞かせ、電波ばく露前後の脳波を比較しました。

研究結果

30分間の電波ばく露前後において、被験者の聴覚経路の関連する脳波には有意差はみられませんでした。今回の結果から、音2発刺激によるMLR法で評価する限り聴覚路における抑制性介在ニューロンに電波は影響しないことがわかりました。

本研究から派生した論文

Arai N, Enomoto H, Okabe S, Yuasa K, Kamimura Y, Ugawa Y. Thirty minutes mobile phone use has no short-term adverse effects on central auditory pathways. Clin Neurophysiol. 2003 Aug;114(8):1390-4.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12888020


Yuasa K, Arai N, Okabe S, Tarusawa Y, Nojima T, Hanajima R, Terao Y, Ugawa Y. Effects of thirty minutes mobile phone use on the human sensory cortex. Clin Neurophysiol. 2006 Apr;117(4):900-5.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16439184


Terao Y, Okano T, Furubayashi T, Ugawa Y. Effects of thirty-minute mobile phone use on visuo-motor reaction time. Clin Neurophysiol. 2006 Nov;117(11):2504-11.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17005447