【2004-2】列車内電波強度についての研究(測定結果の発表)

研究目的

携帯電話からの電波が医療機器、特に心臓ペースメーカに及ぼす影響については、不要電波問題対策協議会(現、電波環境協議会)が中心となり、実験調査に基づき、携帯電話を使用する際には心臓ペースメーカ本体装着部位から22cm離して利用する旨のガイドラインが1996年に出されています。

その後の総務省の調査においてもこのガイドラインが妥当であることが確認され、2005年に総務省指針[1]にも同じガイドラインが採用されています[2]。しかしながら、電車内などに代表されるような金属壁で覆われた閉空間内においては、壁からの反射などの影響が無視できないとして、ガイドラインに対する懸念の声があります。

そこで電車に代表される身近な閉空間での携帯電話による電波環境について評価しました。


[1] 総務省, “各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器等へ及ぼす影響を防止するための指針”

[2] 2013年1月の総務省指針改正以降、推奨される離隔距離は、15cm程度以上となっている。

研究内容

検討は計算機シミュレーションによる検討を基本にし、この計算機シミュレーションの妥当性について、実際の電車を用いた実験により検討を行いました。

本検討ではまず、車両内電波伝搬について実験用と計算機シミュレーション用の基本モデルを構築し、実測により得られた車両内の電磁界分布と計算機シミュレーションにより得られた電磁界分布を比較し、計算機シミュレーションで用いるモデルの妥当性について検討を行いました。

その後、実験により妥当性を裏付けられた計算モデルを用いて多数の乗客の存在、複数の携帯電話使用などの実際的で複雑なモデルについて電磁界分布推定を行いました。

研究結果

本検討により、携帯電話からの電波の金属壁からの反射があるような電車内での複雑な電磁界分布の評価において、計算機シミュレーションが有効であることを確認しました。

またその結果から、不要電波問題対策協議会ならびに総務省の指針は電車内でも有効であることを確認しました(120名乗車、同時送信携帯電話数:5台、周波数800 MHz帯)。また、同時に電車内での携帯電話からの電波を評価するには、携帯電話使用者や他の乗客の人体による電波吸収効果を適切に評価することが重要であることがわかりました。

本研究から派生した論文

Hikage T, Nojima T, Watanabe S, Shinozuka T. Electric-Field Distribution Estimation in a Train Carriage due to Cellular Radios in order to Assess the Implantable Cardiac Pacemaker EMI in Semi-Echoic Environments IEICE Transactions on Communications, Vol. E88-B, No. 8, pp. 3281-3286, Aug. 2005[3].


[3] 本論文は、WHO研究データベース登録されています。