【2018-1】カルシウム動態に対する高周波数帯電磁界の影響評価

研究目的

高周波電波ばく露が細胞内カルシウムイオン濃度の変動に影響を及ぼすとの主張に対して、電磁環境委員会は、2015年度までに、EUにおいて健康リスクを扱う「新興及び新規に同定される健康リスクに関する科学委員会(SCENIHR)」が注視している論文の再検討を行いました(結果は、影響なしでした)。本研究では、類似の内容を主張する別の論文(以下、Blackman論文)に対する再検討を行うこととしました。ある限られた条件の高周波電波ばく露に対して細胞からのカルシウムイオン流出が増大する(ウィンドウ効果と呼びます)との主張に合わせて電波のばく露条件を変更し、対象の細胞をBlackman論文と同一としました。カルシウムイオン濃度の分析については、現在主流となっている蛍光物質を使用する手法を取り入れました。

研究方法

LTEの電波を、周波数:1950MHz、SAR:パルス状の電波において平均値で最大2 W/kg、瞬時値で最大40 W/kg、ばく露時間:30分の条件とし、1条件あたり3回の繰り返し実験を行いました。対象の細胞には、ヒト由来神経芽細胞腫(IMR-32)およびマウス神経芽細胞腫・ラット神経膠腫ハイブリドーマ細胞(NG108-15)を用いました。先行研究では放射性同位元素を使用していますが、本研究ではカルシウム濃度によって蛍光強度が変化する蛍光物質(Fura2-AM)を使用しました。

研究結果

いずれのばく露条件においても、またどちらの細胞株においても、高周波数電波ばく露の影響は認められませんでした。

派生した論文等

Sakurai T, The effect of a long-term evolution (LTE) on the intracellular calcium concentration. BioEM 2019, The Joint Annual Meeting of The Bioelectromagnetics Society and the European Bioelectromagnetics Association, PB-82, Montpellier, France, June 23-28, 2019