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【2002-1-1】30分間の携帯電話使用が中枢聴覚経路に及ぼす短期的な影響についての研究

目的

本研究では、携帯電話電波への30分間のばく露が、ヒトの中枢聴覚経路に短期的な悪影響を及ぼすかどうかを調べることを目的としました。

方法

聴覚が正常なボランティア被験者15人(男性10人、女性5人、年齢26~50歳)を対象に、800MHzの携帯電話電波への30分間のばく露の前後における聴覚への影響を、以下の3種類の電気生理学的手法を用いて調べました。

聴性脳幹反応(ABR):ヘッドフォンを通じて被験者にクリック音の刺激を与えた後に、聴覚脳幹誘発電位の各成分(Ⅰ波、Ⅲ波、Ⅴ波)の潜時(latency)及び振幅を測定し、ばく露の前後で比較しました。

ABR回復機能(ABR-R):上記と同様のクリック音を2回、異なるインターバル(5~15ms)で与えた後に、1回目と2回目のクリック音の後のⅠ波及びⅤ波の潜時及び振幅を測定し、ばく露の前後で比較しました。

聴性中潜時反応(MLR):Ⅴ波の後に生じる成分(Na波、Pa波、Pb波)の潜時、及び、Na-Pa、Na-Pbの振幅を測定し、電波ばく露の前後で比較しました。

結果

ABR、ABR-R、MLRのいずれについても、電波ばく露の前後で有意差は観察されませんでした。

結論

本研究では、30分間の携帯電話使用後のヒトの中枢聴覚経路における短期的な悪影響は検出されませんでした。

出典

Arai N, Enomoto H, Okabe S, Yuasa K, Kamimura Y, Ugawa Y. Thirty minutes mobile phone use has no short-term adverse effects on central auditory pathways. Clin Neurophysiol. 2003 Aug;114(8):1390-4.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12888020

WHO研究データベース

http://www.who.int/peh-emf/research/database/emfstudies/IEEEviewstudy.cfm?accessionNo=2027