調査研究レポート

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【2002-3-1】1,439MHzの携帯電話電波へのばく露が幼若ラットの血液脳関門に及ぼす影響についての研究

目的

以前の研究(サルフォード他、2003)で、携帯電話電波へのばく露と若齢の動物における血液脳関門(BBB)の破綻との関連が示唆されました。この点を確かめるために、本研究では、携帯電話電波へのばく露が、BBB形成期及び若齢に相当するラットのBBBに何らかの損傷を生じるかどうかを調べることを目的としました。この目的のため、3種類のBBB関連遺伝子(p-糖タンパク質、アクアポリン-4、クラウディン-5)の発現の変化を、タンパク質及び mRNA のレベルで調べました。

方法

BBB形成期に相当する4週齢、及び、若齢に相当する10週齢のF344系統の雄のラットを実験対象に用いました。実験1では、4週齢のラットに対し、BBBを破壊することが報告されている化学物質である1,3-ジニトロベンゼン(DNB)を投与し、3日後に脳を摘出して標本を作成し、BBB関連遺伝子の発現への影響を確認しました。実験2では、4週齢及び10週齢のラットに対し、我が国の標準規格であるPDC方式の携帯電話に用いられている、1,439MHzのTDMA信号(50パルス/秒、デューティ比33%)を、脳平均の比吸収率(SAR)が0、2、6W/kgで90分/日、6日/週、1週間または2週間にわたり、プラスチック製ホルダーに固定した状態で照射しました。その後、脳を摘出して標本を作成し、BBB関連遺伝子の発現への影響を調べました。血管の透過性についても、トレーサーにFITC-デキストランを用いて調べました。

結果

DNB投与群では、3つのBBB関連遺伝子の発現が、いずれも有意に低下していることが確認されました。電波ばく露群では、どのSARレベルでも、また4週齢及び10週齢のどちらのラットにも、神経膠症または変性病変といった組織病理学的な変化は見られませんでした。また、BBB関連遺伝子の発現レベルにも明確な違いはありませんでした。電波ばく露群では、FITC-デキストランは血管内に留まっており、血管周囲への漏洩は観察されませんでした。

結論

本実験条件では、脳平均SARが2W/kgまたは6W/kgとなるような1,439MHzの電波に対して,未成熟及び幼若ラットを 1週間または2週間長期的にばく露させた場合においても、BBBへの悪影響を及ぼす証拠は得られませんでした。これはサルフォードらの結論とは異なり、携帯電話使用は成人だけでなく子どものBBBに対しても安全であるという考えを支持しています。

出典

Kuribayashi M, Wang J, Fujiwara O, Doi Y, Nabae K, Tamano S, Ogiso T, Asamoto M, Shirai T. Lack of effects of 1439 MHz electromagnetic near field exposure on the blood-brain barrier in immature and young rats. Bioelectromagnetics. 2005 Oct;26(7):578-88
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16142770

WHO研究データベース

http://www.who.int/peh-emf/research/database/emfstudies/IEEEviewstudy.cfm?accessionNo=2581